中学受験算数「比と割合」がわからない子への段階的指導法 - 混乱の原因と5つのステップ
中学受験算数で多くの子がつまずくのが「比」と「割合」です。「比は分かるけど割合が分からない」「どっちを使えばいいか混乱する」という声をよく聞きます。
実は、比と割合が苦手な子には3つの共通パターンがあります。この記事では、それぞれの原因と、具体例から抽象概念へ段階的に理解する5ステップ学習法をご紹介します。
「比」と「割合」で混乱する子の3つの共通パターン
🧑
「比と割合って、何が違うんですか?どっちも『くらべる』計算ですよね?」
🦉
「良い質問じゃ!実は、比と割合は『くらべ方』が違うんじゃ。まずは、どこで混乱しているか見極めよう!」
パターン1: 「比」と「割合」の違いが分からない
比と割合が苦手な子の最大の特徴は、2つの概念の違いが理解できていないことです。文章題から情報を読み取る力については算数の文章題でつまずく原因と読解力の鍛え方で解説しています。
よくある混乱例:
たとえば、「リンゴ3個とミカン2個の比は?」と聞かれて、「3/5です」と答えてしまうケースです。正解は「3:2」ですが、割合の計算と混同しているのです。
パターン2: 抽象的な概念がイメージできない
比と割合は抽象的な概念なので、具体的なイメージが湧かない子が多いです。
イメージできない子の特徴:
たとえば、「濃度5%の食塩水」と言われても、どれだけ塩辛いのかがイメージできない子は、このパターンです。
パターン3: 「もとにする量」が見抜けない
割合の問題で最も重要なのが、「もとにする量」を正しく見抜くことです。
もとにする量が分からない子の特徴:
たとえば、「昨日は100円、今日は120円。今日は昨日の何倍?」という問題で、120÷100=1.2倍を計算すべきところ、100÷120と逆にしてしまうケースです。
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「比」と「割合」の本質的な違いを理解する
比と割合を克服するには、まず2つの違いをはっきりさせる必要があります。
「比」とは:2つ以上の量の関係
比は、複数の量をそのままの関係で表す方法です。
特徴:
例:
「割合」とは:もとにする量に対する比率
割合は、もとにする量を1としたときの比率です。
特徴:
例:
2つの違いを整理する
|------|------|------|
| 表し方 | 3:2 | 3/5, 0.6, 60% |
|---|---|---|
| 意味 | AとBの関係 | Aは全体の何割か |
| 基準 | 両方を並列でくらべる | 片方を基準(もとにする量)にする |
| 問い方 | 「AとBの比は?」 | 「AはBの何倍?」「AはBの何%?」 |
この違いを理解すれば、問題文から「比」か「割合」かを見抜けるようになります。
🧑
「比は『並列』、割合は『片方を基準』なんですね!でも、どうやって使い分けるんですか?」
🦉
「良い質問じゃ!具体例から段階的に学んでいけば、自然に使い分けられるようになるぞ。次は5ステップ学習法を見てみよう。」
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比と割合を段階的に理解する5ステップ学習法
比と割合は、具体→抽象へ段階的に学ぶことで理解が深まります。
ステップ1: 具体物で「くらべる」感覚をつかむ
まずは、実物を使って「くらべる」体験をしましょう。
練習例:
この段階では、「比は並べた関係」「割合は全体のうちの一部」という感覚を体で覚えます。
ステップ2: 線分図で視覚化する
次は、線分図で数量関係を視覚化します。
例: リンゴ3個、ミカン2個
```
リンゴ |---|---|---| (3個)
ミカン |---|---| (2個)
比: 3:2
全体: 5個
リンゴの割合: 3/5
ミカンの割合: 2/5
```
線分図を描くことで、比と割合が同時に見えるようになります。
ステップ3: 「もとにする量」を見つける練習
割合の問題では、「もとにする量」を見抜くのが最重要です。
練習問題例:
1. 「昨日100円、今日120円。今日は昨日の何倍?」
→ もとにする量: 昨日100円
→ 計算: 120÷100=1.2倍
2. 「定価1000円の商品を20%引きで売る。売値は?」
→ もとにする量: 定価1000円
→ 計算: 1000×0.8=800円(または 1000×0.2=200円引き)
見抜くコツ:
ステップ4: 比を割合に、割合を比に変換する
2つの概念を相互に変換する練習をします。
変換練習例:
比→割合
割合→比
この練習で、比と割合は表現が違うだけで、本質は同じことが分かります。
ステップ5: 応用問題で定着させる
最後に、複合的な問題にチャレンジします。
応用問題例:
1. 「AとBの比が3:2で、Aが120個。Bは何個?」
→ 比例式: 3:2=120:x → x=80個
2. 「300人のうち女子が40%。男子は何人?」
→ 女子: 300×0.4=120人
→ 男子: 300-120=180人(または 300×0.6=180人)
3. 「濃度10%の食塩水200gに、食塩を何g加えると15%になる?」
→ 最初の食塩: 200×0.1=20g
→ 最終的な食塩水: (20+x)/(200+x)=0.15
→ x=約11.76g
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線分図と面積図の使い分け方
比と割合の問題では、図を描くことが理解の近道です。
線分図が向いている問題
使うべき場合:
例: 「太郎君120cm、花子さん100cm。身長の比は?」
```
太郎君 |-----------|------| (120cm)
花子さん |-----------| (100cm)
比: 12:10 = 6:5
```
面積図が向いている問題
使うべき場合:
例: 「濃度10%の食塩水200g」
```
食塩水200g
┌─────────┐
10%│食塩20g │
│ │
└─────────┘
```
面積図では、縦×横=全体の関係が一目で分かります。
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保護者ができるサポート方法
家庭でも、比と割合の力を伸ばすサポートができます。
サポート1: 日常生活で「くらべる」体験
料理や買い物の場面で、比と割合を使う機会を作りましょう。
例:
実生活で使うことで、抽象概念が具体的な意味を持つようになります。
サポート2: 「もとにする量はどれ?」と問いかける
子どもが問題を解くとき、「何を基準にしてる?」と聞いてみましょう。
効果:
サポート3: 図を描く習慣をつける
比と割合は、必ず図を描くように促しましょう。
ポイント:
図を描く習慣がつけば、複雑な問題も整理できるようになります。
🧑
「比と割合の違いが分かりました!もとにする量を見つけて、図を描けばいいんですね!」
🦉
「その通りじゃ!比と割合は、具体例から段階的に学べば必ず理解できるんじゃよ。」
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まとめ: 比と割合を克服するために
比と割合で混乱する子の特徴は以下の3つでした:
1. 「比」と「割合」の違いが分からない: 概念の区別がついていない
2. 抽象的な概念がイメージできない: 具体例との結びつきが弱い
3. 「もとにする量」が見抜けない: 基準を見失っている
それぞれの対策は:
比と割合は、具体例から段階的に学ぶことで必ず克服できます。焦らず、一つひとつのステップを確実に進めていきましょう。
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この記事の執筆について
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執筆者
学びツールズ編集部
最終更新: 2025年11月
中学受験算数の指導経験をもとに、保護者の方にも分かりやすく解説しました。
比と割合でお困りの際は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の執筆について
執筆方針
この記事は、学術論文や公式データに基づき、学びツール.com編集部が作成しました。 情報の正確性を最優先し、定期的な更新を行っています。
執筆者
教育分野での経験を活かし、科学的根拠に基づいた学習情報を提供しています。
更新履歴
- 2025年11月: 初版公開
- 2025年11月: 更新